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昭和二十五年ごろだったか、『週刊朝日』で「百万人の小説」という名で一般から懸賞募集を行った。松本清張は歴史小説の『西郷札』（1950 年）というこの初めての小説は三等に入った。なぜ歴史小説を書こうと思ったのか。

『半生の記』で、「冬の夜、足を炬燵に突込んで父の手枕で聞く太閤記などがどれくらい面白かったか分からない。」[20]という記憶の描写が書かれている。歴史小説をはじめ、文壇にデビューしたことがその記憶に切っても切れない関係があると思われる。

それから、『三田文学』を編集していた木木高太郎がこの小説を読んで『三田文学』の書くように勧められて、1952 年に「記憶」「或る『小倉日記』伝」を発表した。1953 年に「或る『小倉日記』伝」が坂口安吾から激賞され、昭和二十七年下半期（第 28 回）の直木賞を受賞した。「或る『小倉日記』伝」における耕作にしても、母親としての藤にしても、人物の生涯を構築する時には、心理の描写を中心にして、物事に触れての繊細な哀傷の感動を表すことが多い。『点と線』（1957 年）のストーリにとって一番重要な「4 分間の目撃」は、清張は当時の汽車の時刻表に照らし、作り上げたものである。

松本清张的美意识论

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3．『或る「小倉日記」伝』と松本清張の美意識.......................20

3.1 「小倉日記」のシンボル性.........................................20

3.2『或る「小倉日記」伝』における「絶対の美」..............................22

4.『点と線』と松本清張の美意識......................................26

4.1 安田亮子の死...................................26

4.2『点と線』における「寂滅の美」.............................27

おわりに............................30

4『点と線』と松本清張の美意識

4.1 安田亮子の死

1956 年の新聞社勤務からフリーになった松本清張は『点と線』を書いている。『点と線』は『旅』に 1957 年 2 月から 1958 年 1 月に連載された。以下に小説の概要をまとめて見てみよう

九州香椎海岸で情死事件が発生する。

死亡したのは料亭「小雪」の女中お時と、目下、ある汚職事件が摘発進行中の－省課長補佐としての佐山憲一で、二人は同じ料亭の仲居たちに東京駅で目撃されているため、心中旅行であったと判断されることになる。しかし、この事件に疑問を抱いた福岡署刑事の鳥飼重太郎と、警視庁部補の三原紀一が、巧妙に組み立てられた時刻表のトリックに挑み、情死に見せた殺人事件であることを解いていく。

小説で重要な役割を果たす香椎海岸といえば、万葉集巻六に収録された「いざ子ども香椎の潟の白妙袖さえぬれて朝菜摘みてむ」という大伴旅人の歌とともに「眺望のきれいなところ」と紹介された。この場所を選んで、時間的と歴史的に余情があると考えている。

この地点を選んで、夫の愛人を殺した安田亮子が肺結核で夫の愛人が公認しなければならない。体の苦痛と夫の浮気に長らく苦しんでいるので、亮子が果てのない絶望に陥り、夫の汚職事件を契機として、汽車の時刻表から得られたアイディアを利用し、「心中事件」を厳密に画策した。計画が思い通りに実施したが、刑事警察は鋭い感覚で殺人事件の真相を次第に解き明かした。物語では結局、安田亮子が夫の安田辰郎を殺してから自ら命を絶った。安田亮子にとっては、この結局が彼女の望む本当の心中だと思われる。

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おわりに

本論では、まず日本の伝統的な意識の中の「もののあはれ」･「幽玄」･「さび」という三つの美学的概念を、生産の背景、発展軌跡と近代以降の理論構築等の方面からまとめてきた。具体的にいえば、「あはれ」と「もののあはれ」は、一切の物に対して、同情、愛慕、可憐、親愛と面白いなどの積極的な感情を含むと同時に、哀傷、寂寥、悲哀等の消極的な感情も表される。中世に形成された「幽玄」という概念には、余情や朦朧性や寂の性格がある。「さび」という美学概念には、「寂寥」、「宿」･「老」･「古」、「然帯（さおび）」という三つの意味合いがある。この三つの概念が積極的な意味も消極的な意味も持ち兼ねているため、結局何が相手に伝わったことは、相手の主観的な感情に決まると考えられている。

次は、松本清張の独特な審美意識を探求することである。清張の審美意識は清張自身の生活経歴に深く関係がある。そのため、清張ならではの生活経歴を分析し、その人生経歴がいかに清張の審美意識の形成に影響を与えたかを研究するわけである。作家になる前の清張は、絶望させられるまで長い貧乏な生活に耐え続けている。このような抑圧的で窮屈な生活の中で何十年を過ごし、様々な仕事をしたことがある。限界ない暗闇で希望も見ないのに絶えず努力し、社会の底でもがいて生きていた。昔についての記憶には翳んで、薄暗くて、淡々たる哀感が満ち込んでいる。自分の生活が不幸だからこそ、自分に似たような生活を生きている人に深く憐憫を抱いたと言われている。このような経歴と性格があるから、清張の美意識が日本の伝統的な美意識の中の消極的な面に重ね合えて共鳴を起こし、さらに消極的な傾向が呈している美意識が清張の作品に大いに影響を与えていた。ことに作中の登場人物の生涯を構築しているときに、哀感と寂寥感が滲み出た美意識は非常に鮮明になっている。

参考文献（略）