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まず、川端康成の美意識の伝統性を考察してみる。前述のとおり、日本の古典美意識は、川端康成の美意識に深い影響を与えた。季節の花鳥風月、山川草木などの自然景観はよく古典文学の対象となる。また、人間と自然との間に精神的な融合と交感により、自然描写には人物感情が含まれたうえで、「もののあはれ」「幽玄」「さび」の美意識も思い出された。川端康成の作品はきれいな自然景色を背景に、豊かな季節の移り変りの中で、人物運命の変化と人物感情の変化が巧みに結びつかれ、「女性美」「もののあはれ」「幽玄」などの日本の古典美意識を表現したため、彼の美意識は伝統性が強いと思われる。

次に、川端康成の主客一如主義の現代性を分析してみる。上述したように、時代背景は、川端康成の主客一如主義の形成に深い影響を与えた。第一次世界大戦後のヨーロッパにダダイズム、アバンギャルド運動、ドイツ表現主義などが興った。新感覚派はその表現や手法特に暗示的、比喩的、擬人法的、象徴主義的文体を導入し、日本語の文体に大きな影響を与えた。それに川端康成も「新進作家の新傾向解説」において新主観主義的表現について以下のように説明している。

おわりに

以上は川端康成の代表作--『伊豆の踊子』を手掛かりに彼の美意識と主客一如主義について分析してきた。結果は以下のようである。

まず、川端康成の生活環境と日本の古典美意識、『伊豆の踊子』における環境と人物描写について詳細に考察してきた。彼の生活環境と日本の古典美意識の影響で『伊豆の踊子』における「自然美」「人情美」「もののあはれ」「幽玄」などの美意識が生まれたことが明らかになった。

次ぎに、『伊豆の踊子』における主人公と景色の主客一如主義、主人公と他人の主客一如主義、主人公と川端康成の主客一如主義について考察してきた。主人公と景色との主客一如主義には「自然と人情との結び」という日本の古典美意識が窺えた。それに対し、主客一如主義はヨーロッパのダダイズム、ドイツ表現主義などの影響で「比喩」「象徴主義」などの特徴を持っていることが明らかになった。また、主人公と他人との主客一如主義において「もののあはれ」などの美意識が窺えた。それに、ヨーロッパのダダイズム、ドイツ表現主義などに基づき、下層階級に対する同情を暗示的な手法で表現していることが分かった。

最後に、川端康成の美意識と主客一如主義との比較により、その二つの関連性について考察してきた。川端康成の美意識は伝統性が強いが、彼の主客一如主義は現代性を帯びることが明らかになった。また、荘子の「物化」は川端康成の主客一如主義の二重意味と共通点があるうえに、老荘思想も川端康成の美意識に深い影響を与えたことが分かった。一方、『伊豆の踊子』における美意識と主客一如主義について比較しながら、分析してきた。作品における主客一如主義だけでなく、美意識の中心テーマも旅芸人の「人情美」により表現されることが分かった。さらに、その主客一如主義を主軸とし、美意識を表現していることも明らかになった。

参考文献（略）