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なぜハッキリと本当のことを云わなかったんだと、君たちは云うかも知れない。やっぱり君らを欺していたんだと思うかも知れない。しかし君、そこはぬすッとたる僕の身になって考えてもくれたまえ。僕は悲しいことではあるがどうしてもぬすッとだけは止められないんだ。けれども君らを欺すのは厭だったから、本当のことをできるだけ廻りくどく云ったんだ。」

「読者諸君よ、以上は私のうそ偽りのない記録である。私はここに一つとして不正直なことを書いてはいない。そうして、樋口や中村に対すると同じく、諸君に対しても「私のようなぬすッとの心中にもこれだけデリケートな気持ちがある」と云うことを、酌んで貰いたいとおもうのである。」

表 1 「买」と「卖」の意味変化

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第三章 『前科者』――「藝術」と「生活」との葛藤·············· 11

3.1 入獄時の「己」の心境変化··················· 11

3.2 最後の借金················14

第四章 『呪われた戯曲』――「藝術」と「生活」との乖離··················17

4.1 妻必殺の理由························18

4.2 佐々木の自殺··················20

第五章 『白昼鬼語』――藝術的生活の実現························24

5.1 満たされた「覗き願望」···················· 25

5.2 満たされた「被視願望」························ 26

第六章 谷崎大正期の犯罪小説における男性像の共通点

6.1 エゴイズム

最初に挙げられる主人公たちの共通的特徴の一つは「エゴイズム」である。そしてエゴイズムの特徴は『私』『前科者』『呪われた戯曲』にもっともよく現れる。

『私』においては、主人公の「私」は自分の欲望を満たすことしか考えておらず、友人への友情は本当だと主張しながら、大切なはずである友人に対してもぬすッと行為を働いたのである。それだけではなく、自分がぬすッと行為を働いたのは、自分が「生まれつきのぬすッと」であるからだと図々しく言い訳をした。また、現行犯として捕まった後も、被害者の友人たちには「不明の罪」があると責任をなすりつけ、それでも友人たちに理解を求めようとした。本当のことを言わなかったのは自分なのに、却ってすべてを真相に察しなかった友人のせいにして、何でも自分の都合のいいように解釈してしまう。このような一連の行動から示されるように、「私」がどれだけ究極のエゴイストであるかは分かるだろう。

『前科者』においては、主人公の「己」が「K」に借金をする行為を「図々しい」という言葉で表現してもっとも適当であろう。物語の後半はほとんど、「己」がいかなる手段を持って「K」に借金をするかをめぐって展開されていく。「己」が何十遍となく、「K」を欺いてまた臆面もなく借りに行き、例のごとく議論を展開し、例のごとく期限を誓い、例のごとくすっぽかすことを繰り返した。最後の借金にあたって、「己」は自分の藝術に対する「K」の崇拝の情を利用して、女に手切り金を渡すため、ひたすら藝術に専念したいという理由で「K」に借金を求めた。しかも、「K」の同情を求めるため、心のこもった告白もして、今度こそちゃんと返すという約束をして証文に印をつけることまでしたが、最後はやはり約束を守らずにいた。実は、「己」がほしいのは「K」からのお金だけであって、お金さえもらえばいかなる手段を使ってもかまわないし、「己」は最初から「K」にお金を返すつもりはなかったのである。また、こんな図々しいことをしたにもかかわらず、「K と云う好人物の友人がある事は、意志弱行な己をして、際限もなく背信を重ねさせる因だった。」と責任を転嫁する。彼は自らの私利私欲のためにやったすべての事が、彼がエゴイストである事実の何よりの証明であろう。

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第七章 まとめ

谷崎潤一郎の早期創作は明治 43 年（1910 年）から始まり、この時期における日本文壇は「無理想、無解決」な平面描写を創作理念とする自然主義文学に牛耳を執られている。自然主義文学者たちは客観的な立場で現実のありのままの姿を観察し描写することを強調し、真実を描くためにあらゆる美化を排斥する。このような文壇現状を背景にして、谷崎潤一郎は自然主義文学者の価値観や文学観を転覆しようとして、デビュー作の『刺青』を代表とする、想像や色彩に富む一連の作品を生み出したのである。反自然主義運動が盛んになっていく時代背景のもとで、19 世紀後半における西欧耽美主義文学の影響を受けることに加え、谷崎はボードレール、ポーやワイルドなどの西欧耽美主義文学大家に強い憧れを抱いている。「芸術至上主義」を主張し、自然を排し、芸術独自の空想世界の創造を目的とし、思想よりも感覚を重んじ、道徳性を超脱して美の自律性を追求する西欧耽美主義の思想に基づいて、谷崎の文学理想が生み出された――それは谷崎がデビュー作『刺青』を以て示されたように、「すべて美しい者は強者であり、醜い者は弱者であった」といった谷崎流の美的趣向である。彼は「美」をもっとも価値のあるものと考え、その美的世界を追求するために、道徳を否定し、悪徳や享楽を肯定する。

こういった美的趣向を持つ谷崎は官能的な刺激や新鮮さを求めるために、犯罪といったテーマを利用して、彼はその病的世界観、審美観を思うままに発揮しようと試みたが、彼がその悪の美をあまりにも極端な態度で追求してきたため、彼の試みは単なる形而上的な本能主義にすぎないではないだろうか。谷崎は犯罪やミステリーといったテーマを扱う作品の中で、彼は豊富な想像力や華麗なる表現手法を以て、社会一般倫理道徳及び伝統的価値観に反する唯美の世界を作ったのである。確かに、谷崎の文学世界は「灰色の自然主義文学を背景にして、黒い曇天を背景にして咲き誇る絢爛たる牡丹の美を開顕した」1（三島由紀夫語り）というのであるが、「別段あらを捜さうと努めなくても、氏の作品から容易にみてとれるものは批評精神の薄弱である」2といった小林秀雄の評価も見逃してはいけない。谷崎の初期創作は西欧耽美主義のヒューマニズムといった内包を捨て、一方的に官能や刺激を追求し、人生の意義などについての思考に欠けている。彼が大正時代に創作した一連の犯罪小説においても、その男性主人公たちの人物像はその点を証明してくれるだろう。大正時代における谷崎が犯罪やミステリージャンルに対する試みは、まさに彼が盲目的に感性や官能的刺激を追求してきた結果であろう。谷崎は新奇で、怪異な感性的刺激を獲得するために、ますます病的で、極端な悪を求めていく。この時期において、犯罪やミステリー以外にも、谷崎は異なるテーマの作品を数多く作ったが、その内容はいずれも空疎で混乱であり、とても成功作とは言えない。谷崎自身もこの時期における大部本论文由英语论文网提供整理，提供论文代写，英语论文代写，代写论文，代写英语论文，代写留学生论文，代写英文论文，留学生论文代写相关核心关键词搜索。