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①の「痛い」の活用形「いたく」を、プラス意味と指摘しているが、実際の用例を見ると、プラスだけではなく、マイナス意味にも使われる｡ 

(８)a 先輩は額の汗を拭い、首筋の段うつ部分の汗を拭い、いたく感激されたようだった。 ――藤本義一『けったいなけったいな人たち』（1995)     b テルは生まれて初めてコーチから指導を受け、いたくご満悦。 ――山中薫『そして、夢は海を越えた』(1990)

(９)a この光景は義俠心あふれる張飛の心をいたく揺さぶった｡ ――桐野作人『破三国志』(2002) b 私はいたく緊張し、いつかけるか、あれこれと考えた。 ――中島梓『マンガ青春記』(1989) 

以上の例文(８)(９)では、(８)は張の分類①に当てはまるプラスの用法であるが、(９)は明らかに話者の心理的の不安定、マイナス状態を表し、つまりマイナス用法である｡BCCWJ で検索したところ、そのような例が多く見られる｡「いたし」は「痛い」の語源として、最初はプラス意味で使われていたが、現代日本語では、程度を表す「いたく」はプラスとマイナスの両方に使われる｡本稿では形容詞「痛い」の多義性と意味拡張を考察するため、副詞的用法の「いたく」は扱わないことにする｡ 

3.形容詞「痛い」の多義性に対する分析 ............................. 12

3.1「痛い」の意味の整理 ...................................... 12

3.2「痛い」のプロトタイプの認定 .......................................... 13

3.3「痛い」の各意味の相互関係 .............................. 14

4.若者ことばとしての「イタイ」 ............................. 16

4.1「イタイ」の意味の誕生 .................................... 16

4.2  「イタイ」の語源 ....................................... 17

4.3「痛い」の表記の変化 .................................... 18

5．中国語の形容詞「痛」との比較 ................... 25

5.1「痛い」と「痛」の意味 ................................ 25

5.2「痛い」と「痛」の相違点 ....................... 26

5.3 まとめ .............................. 27

5．中国語の形容詞「痛」との比較

5.1「痛い」と「痛」の意味

本章では日本語の「痛い」と中国語“痛”との比較分析を行う｡ 中国語では、痛みを表すときは主に“痛”と“疼”の２つの形容詞が使われる。   まず、中国語の“痛”の辞書での語釈は以下の（38）である｡ 

 （38

①疾病、创伤等引起的难受的感觉：头～。肚子～。～风。～痒      (病気、外傷による身体的苦痛)

②悲伤：悲～。哀～。～楚。～惜。～不欲生。(悲しい)

③尽情地，深切地，彻底地：～击。～悼。～责。～快。～改前非。    (非常に、深刻に、徹底的に) 

(38)(39)から、“痛”と“疼”は両方とも「心理的苦痛」を表せるが、“痛”が使える範囲は“疼”より広いことがわかる。(38)②のように、“痛”は「悲痛、哀痛、痛楚、痛惜、痛不欲生」など豊富な語彙を持っているが、“疼”は「心疼、疼爱」のような表現しかない。さらに、(38)③のように、“痛”には「痛恨（非常に憎んでいる）」「痛惜（痛く惜しむ）」のような、程度性を表す副詞的用法があるが、「疼」にはないのである。

  つまり、多義性から見れば、同じく痛覚を表す“痛”と“疼”の中で、“痛”のほうが日本語の「痛い」に近いと考えられる。よって、本章では、「痛い」と“痛”の比較分析を行う。 また、顔(2014)によると、先秦から唐まで、痛みを表すときは主に“痛”が使われ、“疼”は主に医学の書籍に使われていた。隋唐になってから、“疼”は医学以外にも使われるようになったという。そして元末明初になって、“疼”が“痛”を超え、明の時に「疼」が「痛」に代わり、「身体的苦痛」を表す形容詞の主導になった。

6.おわりに

6.1 まとめ 

本稿では、認知言語学の視点から形容詞「痛い」の多義性と意味拡張について考察した｡ 

まずは「痛い」の複数の意味を以下のように分類した｡  

①〈肉体的苦痛を感じる〉

②a〈内部の感情による心的苦痛〉

b〈外部の影響による精神的苦痛〉

③〈常識はずれで心的不快を起こす物事・人物〉

第三章ではその意味拡張のプロセスを考察し、以下のように示した｡ 

第四章では主に新用法の「イタイ」について考察した｡「イタイ」は「いたいたしい」からきた説が有力であると主張した｡ 

また、Twitter で用例を集めて比較した結果、2010 年から 2020 年までの 10 年間で、「痛い」旧用法のカタカナ表記が増加したことから、形容詞カタカナ化の傾向が見られることを指摘した｡さらに、新用法の総数が大幅に増加し、新用法が普及していることが分かった｡一方で、新用法のカタカナ表記が 13％減少したことから、人々が「痛い」の新用法に対する新奇感が減り、人物への評価という用法が形容詞「痛い」の一つの用法として認識され、定着してきたと考えられる｡ 

また、新用法からさらなる新用法「とても凝っている。普通ではなく素晴らしい」が出現し、「イタイ」の評価対象が他人から自分へ、そして使用範囲は出現当初より拡張していること本论文由英语论文网提供整理，提供论文代写，英语论文代写，代写论文，代写英语论文，代写留学生论文，代写英文论文，留学生论文代写相关核心关键词搜索。